ブリュッセル*は、向こう数カ月の間にロシアのガス*供給の一部、若しくは全てを遮断されるシナリオを考えている。ロシアからのガス供給停止が我が国(スペイン)にどのように影響を及ぼすかは、こちらをご覧ください。
ロシアのガス供給をめぐって、EU内で緊張するというシナリオは今も顕在だ。ウクライナ侵攻とその後の制裁が始まって以来、ロシアからのガスの流量が2016年から2021年の平均と比べて30%減少している。
ブリュッセルは、ガス供給の一部、若しくは全てを削減される可能性に直面し、エネルギーを「武器」のように利用しているのではと考えている。欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長は、「ロシアは我々を脅迫しており、欧州は備えなければならない」と述べた。
このような背景から、ガスの消費量を15%削減する提案を打ち出したが、この計画はスペイン政府などによって既に拒否されている。
ロシアのガス遮断がスペインにどのような影響を与えるのか?
スペイン銀行の最新のレポートによると、部分的に供給を停止した場合、我が国(スペイン)の国内総生産(GDP)に1.8%、物価上昇率には1.2%の影響がそれぞれあるという。ロシアとEUが完全に遮断された場合、その影響はより大きく、GDPは1.8%減少するという。
最も影響を受ける国は、ロシアからの流量が多いドイツ、イタリアとフランスであろう。欧州はロシアのガスの主要輸入国であることを覚えておいてほしい。そのため、ブリュッセルは既に全面的、若しくは部分的な停止に備え、代替手段を探す準備をしている。スペインの場合、スペインへの天然ガス輸入のおよそ10%がロシアから、他方35%近くがアルジェリアから輸入されている。
我が国への供給が確保されている以上、欧州委員会の提案は価格上昇に直に反映され、「ナンセンス」であると専門家らは口を揃える。「エネルギー需要を15%削減する努力は、他のどのEU諸国にも実質的なプラスの影響を与えない一方で、経済危機を悪化させ、インフレを加速、今冬の家庭福祉を危険に晒し得る」と、消費者及び利用者国家連合(CECU)はondacero.es*に断言する。
『エネルギー需要を削減する努力は、実質的なプラスの影響を与えない一方で、経済危機を悪化させ、インフレを加速、今冬の家庭福祉を危険に晒し得る』
CECUは、供給削減や配給制の代わりに「エネルギー転換を進める」こと提唱し、その責任が消費者にあるのではなく、「弱い立場の消費者に特に配慮して」エネルギー転換を促す政策にあることは「公平」とは言えないと強調している。
産業用ガスの大口需要家を集めた「Gas INDUSTRIAL」と同様の立ち位置である。同協会のベロニカ・リビエール会長は、「ガスの供給を保証するために、追加措置や需要制限が必要になるというシナリオは想定されていない」とし、スペインは「ロシアの供給が中断する危険性はないにもかかわらず、数ヶ月にわたって市場価格の高騰の影響を受けている」とondacero.esに断言した。
このような意味で、リビエール氏は、消費量を減らすことは「何の影響もない」と強調する。「スペインで、欧州委員会が提案した割合で消費量を削減し、3310TWhの消費上限を遵守することはナンセンスだ」と言い、近年、ガス消費はコンバインドサイクルによる発電で20%、国内20%、産業用60%という構成になっていることを説明で付け加えた。
『スペインの工場や産業の半数を停止しなければならないだろう(…)スペインの産業を止めることは、ヨーロッパのどの国にとっても役に立たないだろう』
また、「EUの要求に反する」傾向であり、「ガス消費量の制限に従う」ために真冬にフランスへの電力輸出を減らすことは「支持できない」との見方を示している。リビエールが考えるように、スペインの気候条件は「ヨーロッパの他の地域よりも良い」ので、暖房用のガスの我が国への配備は「少ない」。例えば、ドイツでは国内消費が44%を占め、スペイン全体よりもはるかに多くのガスを消費している。「わが国では国内消費が20%を占めているので、この措置の影響は小さいだろう」という。
「ヨーロッパが提案する削減は、スペインの産業界が負担すべきもので、10%だけでなく、コンバインドサイクルのガス消費量の増加分を補うことも含まれている。産業用のガス10%削減(37TWh/年)とサイクル消費の補償(85TWh/年)を合わせると、通常の産業用消費は127TWh/年、産業用需要の57%を削減することになる。スペインの工場や産業の半分が停止することになる」と付け加えたGas INDUSTRIALの会長は、「スペインの産業が停止することは、ヨーロッパのどの国にとっても役に立たない」と主張し、「ガスを必要としている国々にガスを送ることができないのであれば、ガスの消費を減らすべきでは無いという政府の意見を支持する。我々は、最も脆弱なヨーロッパ人と連帯しなければならないが、常識的な範囲でという点で意見が一致している」と締めくくった。
*ガス:天然ガスのこと
*ブリュッセル:本記事中では、EU(=欧州連合)のことを表していると推察される。理由としては、
EU本部がベルギーのブリュッセルにあるため、このような比喩的表現がされている。
*ondacero.es:スペイン語圏で放送されているラジオ番組のこと